万里 Madeno「あとのひ」

万里 Madeno「あとのひ」

 2011年春、私は青森でレンタカーを借り、水と食料をトランクに積み、道の駅で車中泊しながら、東北を移動しました。 その過程で、私は自らにひとつのルールだけを課すことになります。 《ひたすら海沿いを走り、南に向かうこと》 それは災厄の現実を前に、思考停止してしまう自分を立ち止まらせないためのルールでした。  2021年3月11日、私は再びルールを自分に課します。青森から福島までひたすら南に向かう過程で、もう一つルールを加えます。それは土地や時代に紐付いたテキストを朗読するということ。読み上げるのは、演説からおしゃべり、歴史書から昔話まで。 大きな物語と小さなかたりを等価に扱います。    パフォーマンスとしての朗読とロードムービーの混交をめざした、この作品は、《震災後》が常態化し、むしろ視野に入らないように過ごしがちの現代の日本にいて、10年を区切りとしないで、いつでも「まえのひ」であり、いつでも「あとのひ」であるということを、すべての語りを等価に接続することを通じて、宣言しようという試みなのです。


万里 Madeno

テレビ番組制作ディレクターとして、ドキュメンタリーや情報番組を中心に、現場主義で取材・制作活動を続けている。  並行して、2008年から写真を用いた作品制作に取り組み始める。2014年写真展「窓-Our Windows-」(東京 エプサイト)、2015年スライドショーセッション「消失の彼方へ」(東京 ガーディアンガーデン)、2015年ラトビアの国際写真教育プログラムISSP(Jim Goldbergクラス)参加など、国内外での展示、ハンドメイドのアーティストブックの作成などのアーティスト活動を行う。  2018年より、東京藝大映像研究科「RAM Association」に参加(現在も継続中)。映像、インスタレーション、パフォーマンスを用いた作品を手掛け始める。2019年グループ展「Geidai BiblioScape 2019」(東京 東京藝術大学附属図書館) 、2021年「福島映像祭2021」(東京 ポレポレ東中野)参加など、活動領域を拡張している。2021年秋からは、ディレクターに加え、メディア文化の研究所にて研究員も兼務。映像メディアを中心にした、ナラティヴ/語り方の研究に取り組もうとしている。